NEWS NO.168(2016年度)
実践農学で、江別市で農業法人「風の村」を主宰する金井正治氏が講義
本学の農食環境学群・循環農学類の「実践農学」では、農業の分野でさまざまな立場で活躍している外部講師を招き、講義を行っています。12月9日(金)は、江別市で「風の村」を主宰する金井正治氏が「6次産業への道のり」と題して講義を行いました。
金井氏は、勤務していた会社を1992年に農業後継のために早期退職し、翌年に陶芸工房の(株)アトリエ陶を設立しました。その後、2007年に農業法人(株)風の村を設立して農業体験や陶芸体験を受け入れ、2010年には敷地内にファームレストラン「食祭」をオープンしました。
はじめに吉野宣彦教授(農村計画論研究室)が、「金井氏の本職は陶芸家ですが、農業を営みながらファームレストランも経営しています。私は風の村で食事つき陶芸体験を受講し、陶芸にはまりました。今日は、なぜ陶芸家が農業なのか、レストランなのかを、じっくりと聞いてください」と紹介しました。
「30代の頃に父の急死で実家の農業を引き継ぎ、会社勤めもしながら陶芸をしていました。朝5時から畑仕事をし、会社に出社して、帰宅後にまた畑仕事、夜には陶芸をするという生活です。しかし体力的にもたないと感じ、ものづくりに専念しようと、44歳の時に早期退職を決断してアトリエを立ち上げました。
風の村を設立したのは、陶芸だけでは経済的に立ち行かなくなったからです。その時、自分に何があるのかを考え、土地があると思い至りました。陶芸と農業を組み合わせて、芸術や自然を体感できる場所を作りました。そして、2.5haの農地で収穫した野菜を、出荷せずにすべて自前で消費したいと、2010年にファームレストラン「食祭」をオープンしました。
レストランを立ち上げる際には、知人から、成功するのは1,000人に1人だと言われました。その時は大げさだと思いましたが、今はそれほど間違っていない数字だと感じています。採算性を考えると、レストラン経営はとても難しいと思います。6次産業化を成功させるためには、人と同じことをしてはうまく行きません。自分が持っているものは何か、自分に最も合っていることは何かを考え、発想力を生かして特色を出さなければなりません。私の場合は、陶芸教室を運営していて江別市にファンがいたことや、ファームレストランが当時は珍しく、テレビや新聞、雑誌などのメディアに取り上げてもらったことが助けになりました」。
講義の後は質疑応答が行われ、学生たちから活発な質問が出されました。「これからやりたいことは?」という問いに、金井氏は「可能なら宿泊施設を作り、子供たちに体験教育する部門を拡充したい」と答えました。