NEWS NO.209(2015年度)
北海道の外来種対策シンポジウムを開催
本学と北海道との包括連携協定に基づき、3月19日に道庁赤レンガ庁舎にて、外来種に関するシンポジウム「指定外来種って何?~何がどうなる?北海道の外来種対策~」を開催しました。
小雨が降る中、一般市民など約100名が参加し、熱心に耳を傾けました。
■あいさつ
北海道 環境生活部 環境局 生物多様性・エゾシカ対策担当局長 石島 力さん
酪農学園大学と道は2014年に包括連携協定締結し、道内の生物多様性の保全に係る調査研究を共同で進めています。
道では、2015年12月に生物多様性保全条例に基づき、12種の動植物を新たに指定外来種の規制対象とし、今年6月19日から施行します。条例の施行後、初めての指定となることから、指定外来種による本道の生態系への影響やその対策について、皆さんに知っていただきたいと思っています。
【指定外来種12種】
(イノシシ、チョウセンシマリス、ニホントカゲ、チョウセンスズガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、アズマヒキガエル、クロマルハナバチ、オオマルハナバチ、アメリカザリガニ、フランスギク、イワミツバ)
■講演1
「北海道の外来種対策と指定外来種について」
北海道 環境生活部 環境局 生物多様性保全課 主査 石野 順一さん
外来種とは、もともと北海道に生息・生育していない、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物です。外来種の移入形態はふた通りあり、ペット展示用・産業用・研究用の生物の放逐など意図的な持ち込みによるものと、荷物や乗り物に紛れたなど非意図的な持ち込みがあります。持ち込まれた外来種の中には、北海道の冬を越すものもいます。寒さに慣れて定着するとみられています。 こうして北海道に入ってきた外来種で、「在来種の捕食、在来種との競合・駆逐」、「植生破壊による生態系基盤の損壊」、「在来種との交雑による遺伝的かく乱」などにより、北海道の生物の多様性に著しい影響を及ぼす(及ぼすおそれがあるもの)を道は、北海道生物の多様性の保全等に関する条例により、独自に指定外来種として指定しました。
指定外来種の取り扱いについて「適切な飼養等」、「放つこと等の禁止」、「販売業者の説明」とし、指定外来種を野外に放つ等の行為は、中止命令を受けることがあり、違反すると罰則(30万円以下の罰金)を受けることがあります。(外来生物法については環境省のHPへ)
生物多様性を確保し次の世代に継承することは、道民全体の重要な責務です。ですから、外来種による生物多様性への影響防止に務めなければなりません。被害予防3原則として、外来種を「入れない」、「捨てない」、「拡げない」。これらを基本の対策として、皆さんに認識してほしいと思います。
■講演2
「アズマヒキガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエルの影響と普及啓発について」
酪農学園大学 酪農学研究科 博士課程3年 更科 美帆さん
外来種には、人為的に国外から持ち込まれた「国外外来種」と国内の他地域から持ち込まれた「国内外来種」があります。北海道には7種のカエルが生息していますが、ウシガエルは国外外来種で、特定外来生物に指定されています。アズマヒキガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエルの国内外来種は、出稼ぎに行った人が土産に持ち帰ったり、学校教材として持ち込まれたのが由来と考えられています。北海道に昔から生息している在来種はエゾアカガエル、ニホンアマガエルの2種のみです。
今回、北海道の指定外来種に指定されたアズマヒキガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル3種の胃の内容物を検出したところ、北海道に生息するあらゆる在来種や希少な生物を補食していることが分かりました。特に、アズマヒキガエルはアリなど地表性の昆虫類を大量に捕食していました。捕食によって、北海道の生物多様性に影響を及ぼす恐れがあるため、北海道の指定外来種とされました。
カエルは動くエサしか食べないので飼育が大変になり捨てられてしまったり、おたまじゃくから変体を経てカエルになるまで育てられないケースが多いと考えられます。そのため、平岡公園でカエルツアーを企画し小学生の親子を対象に環境教育を行っています。また、8月にはキャンプイベントとして、えこりん村のふゆみずたんぼで「トノサマカエルを捕まえろ!大作戦」を行いました。参加者にトノサマガエルについて説明し、教材として活用して普及啓発活動を広げてほしいというのが目的です。今後、今いる外来カエルをどうするか。採れない外来カエルをどうやって採るか、防除できるかが課題です。
■講演3
「アメリカザリガニの現状と普及啓発について」
アメリカザリガニは国外から移入された外来生物です。ペットや小学校の授業で教材用として広く普及され、飼いきれずに野外に放すこともアメリカザリガニが増えた一因となっています。
アメリカザリガニの適温は一般に15℃~25℃で、5℃より下がるとアナを掘って越冬します。北海道の川は1℃より下がる所が多く、温泉排水が流れる特殊な場所以外は適応しづらいとされていましたが、近年は札幌でもアメリカザリガニが確認されています。
アメリカザリガニが捕れた川には下水処理水が流れ込んでいました。北区創成川の下水処理場から流れる処理水は冬でも10℃以上あり、アメリカザリガニが住める環境になっていることも定着につながったと考えられます。
札幌のアメリカザリガニの生息域は、2010年に酪農学園大学の学生が卒論で研究発表し、2011年には同大とさけ科学館と共同でアメリカザリガニの個体を確認するための分布調査を行いました。結果、北区創成川をはじめとする10河川と2つの水遊池で110カ所の調査点を置き、35カ所、268匹のアメリカザリガニを確認しました。
アメリカザリガニを飼育するうえでの注意点は、ペットのアメリカザリガニを川に放すと増えてしまう可能性があるので、野外に放さないこと。川でアメリカザリガニを見つけたら、別の場所に放さないこと。卵を持っていることがあるので、水替えの際には排水口に網をすること。オスとメスを繁殖するなら、共食いさせて飼える数にすることです。
私たちは、「外来生物の生息地が拡大しないよう、みんなで自然を守ろう」とスローガンに、地元の図書館や環境イベントなどで普及啓発活動を行っています。テレビや学会誌などに取り上げられ、少しでも多くの人の知ってもらえたことは良かったのですが、地元の方からは、「子どもがザリガニを捕って遊ぶから根こそぎ捕らないでほしい」と、厳しい意見がありました。こうしたことから、地元の方と共有し、理解を得ながら進めることに効果があると考えています。環境を守りつなぐことは難しいことですが、必要な情報を発信していくことだと思っています。
■パネルディスカッション
テーマ:「どうする北海道の外来種対策」
コーディネーター酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 吉田剛司
参加者に渡された質問カードから質疑応答が行われ、活発な意見が飛び交いました。
吉田教授は、「指定外来種を今後どうしていくか、世論が必要です。道民が提案しないと止まらない問題です」と警鐘を鳴らしました。
この日、18時45分から放送のNHK「ニュース北海道645」(18:45~18:53道内放送)で、シンポジウムの模様が放送されました。
■北海道 環境省 自然環境局⇒ 外来生物法 http://www.env.go.jp/nature/intro/
■北海道ブルーリスト 2010 ⇒http://bluelist.ies.hro.or.jp/>
■北海道 指定外来種の指定⇒ http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/shiteigairaishu01.htm