NEWS NO.84 (2017年度)
本学学生が日本哺乳類学会2017年度大会で優秀ポスター賞を受賞
日本哺乳類学会 2017年度大会が9月8日~11日の4日間、富山大学五福キャンパスにて開催され、環境共生学類4年の板倉来衣人(いたくら らいと)さん(指導:環境動物学研究室 森さやか准教授)が、優秀ポスター賞を受賞しました。
○受賞ポスター
題目:「岐阜・長野県産ニホンカモシカにおける異常歯の出現状況と愛知県との比較」 著者:板倉来衣人(酪農学園大学)、川田伸一郎(国立科学博物館)、森さやか(酪農学園大学・環境動物学) ○受賞ポスターの評価 調査した標本が800点以上と、学部生の観察個体数としては多く、その努力量が評価されました。 ○概要と目的 ニホンカモシカでは、愛知県産の755個体数の歯数異常を調べた研究が2005年にありました。 愛知県個体群は、過去に狩猟によって分布域が縮小され孤立した結果、愛知県個体群は同系交配などにより、異常の出現頻度が高くなった可能性があります。 愛知県に隣接する岐阜県と長野県では、主要個体群が維持されていたため、愛知県個体群と歯数異常の出現頻度を比較し、差異を明らかにするものです。 |
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○板倉 来衣人
「環境共生学類には形態学や解剖学の研究室がないので、自分のやりたい分野の研究ができないと思っていたところ、森先生が務めておられた国立科学博物館の川田伸一郎先生をご紹介いただきました。川田先生に1万点のニホンカモシカの標本を調べたら?と勧められ、一年くらい前から長期休みを利用して、国立科学博物館で標本を見させていただいています。 1万点の標本のうち、2千点のデータを採ることを目標にしていましたが、作業に時間が掛かり達成はできませんでした。データ上は800点ですが、破損している物もあったので千点は観察しました。本当に気の長い作業に労力を費やしました。何かおかしなことが見つかると最初からやり直しになります。データ入力作業も一苦労です。大変な作業ですが、とにかく骨が好きなので、周りにある標本を見て息抜きをしたり、自分はもう、収蔵庫の一部になっていました(笑)。 形態学の基本は「歯」です。形態学を学ぶには、とにかくたくさんの骨格標本を見ないとはじまりません。そういった意味では、酪農大はあまりに標本が少な過ぎます。何より、博物館がないのはとても残念です。標本を処分してしまうのではなく、収蔵庫など設備・環境を整えて、ぜひ、もっとたくさんの標本を残していってほしいです。 将来は、こういった研究を続けていきたいと思っています。そして、私のように標本を必要としている人たちのため、なるべくたくさんの標本を残し、その価値や魅力を後世に伝えていきたいです」 |
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○森さやか准教授から一言
「800点以上の標本を調べるのは、根気のいることです。好きでなければできません。標本は収集してすぐに役立つ訳ではありません。ですが、調査・研究のため、後世に残すことは学術的に大切な事です。それが、博物館本来の仕事であり、博物館の存在意義でもあります。 今回の受賞は、彼の将来の活躍を期待するもので、応援を含めた努力への評価と思いますので、これからもますます研究に邁進していってほしいと思います」
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○川田 伸一郎さん(国立科学博物館)モグラの研究で知られ、数々の著作物を執筆する「モグラ博士」。「標本バカ」と自称するほど標本好き。
1988年頃から自然環境研究センターが保存していたニホンカモシカの死骸約1万8千点を川田先生が日課のように漂白し、1万点程を標本として形に残した。 ○科博メルマガ第752号(2017.9.21)には、板倉さんのことが書かれています。
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○博物館マンガ「へんなものみっけ!」著作:早良 朋
(作者は森先生の学生時代の研究室の同期) 自然科学(特に博物館と鳥類学)をテーマとした漫画で、第1話には、ニホンカモシカが出てきます。 月間スピリッツ連載中! 無料立ち読み→http://comics.shogakukan.co.jp/book?isbn=9784091895455
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