NEWS NO.126(2015年度)
家畜衛生学研究室がJA釧路太田青年部と交流
本学の農食環境学群循環農学類・畜産衛生学研究室では、畜産の現場に出向き、課題解決につなげることをめざして研究を行っています。JA釧路太田(厚岸町)管内でも、農協の哺育センターや農家などの協力を得て、調査や試験材料収集を行っています。
10月28日(水)にJA釧路太田青年部員10名と農協職員2名が本学を訪れた機会に、同研究室の学生たちが研究内容を紹介し、意見交換を行いました。
はじめに、同研究室の木原智也ゼミ長、JA釧路太田青年部の大野尋人副部長からあいさつし、出席者全員が自己紹介を行った後、6名の学生がパワーポイントを使いながら自分の研究の概要を説明し、青年部員と意見交換しました。
● 「JA釧路太田哺育センター マンダアニモ給与効果」(北野菜奈さん、3年)
「マンダアニモ(植物質発酵飼料で子牛の良好な発育等を目的としたアミノ酸サプリメント)」を哺育センターの子牛10頭に30日間給与し、効果を調査。肺炎の進行を抑える、増体量が多い、受胎率が100%、腸炎にかからないなどの効果がありました。
● 「日本における牛呼吸器感染症に関わる細菌の浸潤調査」(中村有貴さん、4年)
道内、山形県、静岡県、滋賀県、長崎県の牛から、春と冬にサンプルを採取し、細菌の感染状況を調査。マイコプラズマの発生は北海道がほとんどで、他の細菌も道内での発生が多く、寒さによるストレスや大規模な飼養形態による感染拡大が原因と考えられます。
● 「全国の牛農場における衛生モニタリング調査」(森脇祥江さん、4年)
NOSAI獣医師の協力を得て、道内、山形県、静岡県、滋賀県、長崎県の約200件の農場に、農場や牛の衛生管理に関する30項目のアンケート調査(択一式)を実施。山形県の得点が高かったです。全般的に現場では衛生管理がきちんと行われておらず、農家の意識も低いことが分かりました。
● 「エゾシカと牛の感染症の交差についての調査」(古木陽子さん、4年)
野生のエゾシカと乳牛が接触する可能性があるが、エゾシカが乳牛の病気に感染していないかを調べるため、エゾシカの糞便や血液、鼻汁などを採取して遺伝子を分析。白血病やヨーネ病はなかったが、ウイルス性下痢などが出て、交差の可能性が認められました。
● 「釧路地域の黄色ブドウ球菌性乳房炎の疫学的解析」(成田美咲さん、4年)
釧路地域の50農場の乳汁サンプルを分子疫学解析POTキットで解析し、PCRを用いて分離同定しました。菌種はおおむね2系統に集約されたが、釧路太田管内では、多くの系統が確認されました。
● 「黒毛和牛の疥癬症におけるChorioptes属の同定」(野﨑早織さん、4年)
疥癬症はダニ性皮膚炎で、肉牛は頭や肋骨などに発生し、枝肉成績に影響。乳牛は尾根部や大腿部などに発生し、肉牛とは発病部位が異なります。北海道、山形県、長崎県の牛をサンプルとして、疥癬症を調査。原因となるダニを調査した結果、Chorioptes texanusが多いことが分かりました。