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第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会で、石川健吾さん・増田麻子さんが受賞

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NEWS NO.206(2015年度)

第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会で、石川健吾さん・増田麻子さんが受賞


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 2016年2月19日(金)~21日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県)で開催された「第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会」において、本学獣医保健看護学類4年の石川健吾さん(動物行動学ユニット・佐野忠士准教授)が臨床研究アワードを、同4年の増田麻子さん(同ユニット)が看護アワードを受賞しました。
 日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)は、全国16獣医系大学の内科系教員が集まり、すでにある学会・研究会と連携を図りながら、獣医内科診療のさらなる発展をめざしています。同学術大会には、獣医師、研修医、学生など2,975名が参加し、症例検討・研究発表の中から、臨床研究、研究、症例検討、看護の4部門についてそれぞれ2題、計8題がJCVIMアワードとして表彰されました。
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●石川健悟さんの研究(臨床研究アワード受賞)
「うさぎって本当にストレスに弱いの? ~糞便と血液から得られたストレス測定結果から考える~」


 ストレス感受性が高く、ストレスに伴って疾病を発症したり、時には死に至るとも言われているうさぎについて、ストレスと疾病との関連性について報告しました。一般家庭で飼育さている個体(一般個体)、ペットショップで販売されている個体(販売個体)、疾病を有して動物病院へ来院した個体(疾病個体)から、糞便と被毛、血液を採取し、コルチコステロンなどストレス関連物質の値を測定しました。その結果、販売個体や疾病個体は、一般飼育の個体と比べてストレス関連物質の値が高く、うさぎの糞便や被毛などから、慢性的環境ストレスや疾病により生じるストレスを推察することが可能と結論づけました。
 「自分がうさぎを飼っていて、ストレスについて一般に言われていることは本当なのかと疑問を抱いたのが、この研究を始めたきっかけでした。最も大変だったのはサンプル集めで、特に一般飼育の個体では、飼い主さんから血液を採取して痛い思いをさせたくないと断られて、とても苦労しました。大勢の方々に声をかけて、なんとか協力してもらいました。   
 実際に測定してみると、疾病個体や販売個体は明らかにストレス関連物質が高い値を示しました。糞便からストレスを測定することができれば、糞便を定期的に病院へ持って行って検査してもらうことで、健康状態を把握し、疾病の早期発見や、飼育環境の改善が可能になります。今までされていなかった、うさぎの飼育に役立つ報告ができたと思います」。

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=審査員の講評=
■三輪恭嗣獣医師(エキゾチックペット研究会副会長、みわエキゾチック動物病院・東京)
 うさぎはストレスへの感受性が高いと言われている経験的な事象を、糞便、血液、被毛などのコルチコステロン濃度を測定することにより科学的に評価しており、結果では飼育個体と販売個体および疾病個体間での有意差が確認されています。疾病の重症度の分類や一般個体の症例数が少ないなど今後、改善が必要な箇所はみられたものの研究目的は明確であり、より症例数を集めて客観的な評価基準を確立できれば、臨床獣医学への貢献度は大きいものと思われます。

■中田至郎獣医師(エキゾチックペット研究会理事、水前寺公園ペットクリニック/うさぎの病院・熊本)
 うさぎの臨床がほぼ一般的になったとも思える昨今ですが、未だ犬猫に比べストレスの予想が難しく、それがこの分野の更なる前進を阻む一因であると考えています。予想が難しいうえに犬猫よりもずっとストレスに弱い(ストレスの感受性が高い)のですから、診察する獣医師としてもリスクが高い訳です。ですから、今回発表されたこの分野が更に広がりを見せたり解明されるならば、うさぎの臨床は飛躍的に進歩することが考えられます。同時に、内分泌ホルモンが臨床症状に影響を与えると言われている件と合わせて、考えていく必要性を再認識させる議題です。
 以上の事を踏まえ、今回の発表はうさぎの臨床獣医学への貢献度が高かったと考えます。





●増田麻子さんの研究(看護アワード受賞)
「キャリア引退犬における日常活動の詳細評価」


 12歳前後に引退を迎える盲導犬について、飼育環境の異なるキャリア引退犬を対象に、活動量を測るとともに、血液と被毛からストレス関連物質の測定を行い、飼育環境とストレスの関連性について評価を行いました。その結果、活動量の多い飼育環境にある盲導犬は、ストレス関連物質の値が低いことがわかり、活動量の増加がストレスを減少させる可能性が示されました。
「盲導犬については、現役時の研究は数多くありますが、引退後の生活はあまり研究されていません。先輩の研究から、盲導犬の寿命は比較的長いことを知り、引退後の飼育環境は大切だと考え、この研究に取り組みました。先例のない研究でしたので、活動量計などの器具の使い方、データのまとめ方など一つひとつを自分で考え、夏休み中はずっとデータ処理のためコンピューターと格闘していました。
 データ収集には、盲導犬協会や飼育ボランティアのお宅を何度も伺い、盲導犬に触れてお話を聞き、とても楽しかったです。昨年11月に北海道小動物獣医師会年次大会でも同じ発表をしていましたので、大会での発表は、緊張することなくできました。この研究は後輩が引き継いでくれますので、さらに発展させて良い研究にしてくれると思います」。

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=審査員の講評=
■長谷川篤彦氏(東京大学名誉教授)
 盲導犬は社会が必要とする動物であり、特別に訓練されています。しかし、これまでその活動量、酸化ストレス値および抗酸化力についての検討はなく、またこれらを比較した関連性などについても評価が行われていませんでした。そこで、今回、増田麻子さんら(本学と北海道盲導犬協会)はキャリア引退犬について、活動量(1 日の総活動量と各時間の平均活動量)を個体でごとに比較するとともに、1ヵ月毎に採血し、酸化ストレス値(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)を測定して検討しました。
 すなわち、飼い主のライフスタイルや管理状況を反映した特徴的な値の変動を示すことから、飼育犬の活動量は飼育環境の影響が非常に大きく、飼育者は犬の性格も含めて適切な飼育環境を検討する必要があることが示唆されました。また、今回 d-ROMsおよびBAP 値が以前の報告よりも高値であったボランティア宅メス犬はTotal (総活動量)が低値であり、一方 d-ROMs および BAP の値が以前の報告よりも低値であったボランティア宅メス以外の3 頭はTotal が高値でした。このことから、活動量の違いが酸化ストレスや抗酸化力のバランスに影響を及ぼしている可能性が示唆されました。
 盲導犬の感じるストレスとそれに対する抵抗力とのバランスについて、さらに年齢、食事中の抗酸化成分含有量および摂取状況の影響、疾病罹患の有無なども勘案して、総合的な状態評価を検討していく必要があることを指摘する報告です。これらの結果は極めて興味ある成果で、将来、盲導犬を社会に適切に役立てるための基礎データを集積する方向性を示すものです。

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