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Channel: 在校生の方へ –酪農学園大学 | 獣医学群・農食環境学群
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共働学舎新得農場代表 宮嶋望氏が講演

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NEWS NO.25(2014年度)

共働学舎新得農場代表 宮嶋望氏が講演

 

P1040931 本学農食環境学群循環農学類の「実践酪農学」では、酪農の分野でさまざまな立場で活躍している外部講師を招き、講義を行っています。6月13日(金)は、心や体に困難を抱えた人を受け入れて共に働き、牛を飼育してチーズを中心としたものづくりを行っている「共働学舎新得農場」代表の宮嶋望氏が、「ゆっくりとした時間が生む本物のチーズ」と題して講義を行いました。

 最初に干場信司学長が、「宮嶋さんは約120頭の牛の乳を搾りながら、ハンディを持つ人を含めた約70名と一緒に暮らし、その中でチーズの世界チャンピオンになった人です。豊富な引き出しをお持ちで、話の中にたくさんのヒントがあると思いますので、楽しんで聞いてください」と宮嶋氏を紹介しました。

 

P1040936●宮嶋望氏の講義●

 「『本物』の食べ物とは何か。日本人の中には本物の食べ物という概念があると、私は思っています。今日の講義の中で、本物とは何かということを考えてください。

 

 共働学舎は、1974年に父親が創設しました。30年間教師を務め、障害を抱えた、本当に助けが必要な人たちが社会の中で生きていく場所を作りたいとの思いからでした。私は大動物を担当することになり、アメリカで4年間勉強をしました。アメリカの実習先では、360haの土地で約200頭の牛を家族経営で飼育していました。

 アメリカから戻って1978年に開設した新得農場は、新得町から30haの土地の無償貸与を受け、6人で6頭の牛の飼育をするところから始まりました。そのときに私が心に決めたのは、決してアメリカ式の経営はしないということでした。アメリカの戦略的経営というのは、大型化し、機械化し、遺伝子組み換えなどの最先端技術を駆使して、低コストで安定した生産を維持するというものです。私はそういう量産体制に疑問を持ち、『本物』の品質を追求する生産体制を作っていこうと決めました。

 

 森や川や海という自然の恵みを生かし、自然な素材を使い、本物のチーズを作りたいと考え、フランスAOCチーズ協会会長ジャン・ユベール氏に会いました。共働学舎の趣旨を説明し、できるだけ大勢の人を受け入れるために、牛乳に高付加価値をつけて売りたいと話すと、ユベール氏はそれならばと日本まで来て教えてくれました。

 チーズ作りで彼が一番強調したのは、『牛乳を運ぶな』ということです。これには二つの意味があります。一つは他の牧場で搾った牛乳を持ち込まず、自分の牧場の牛乳のみを使うため、もう一つは、牛乳を運搬するためにポンプを通すと酸化されやすくなってしまうので、自然の力で流下させることです。牛舎のすぐそばにチーズ工房を作り、傾斜をつけて高低差で牛乳が流れるようにしました。

 さらに、牛をブラウンスイス種にしました。この種の牛乳は濃厚で味が良く、ホルスタインに比べると乳量は85%程度ですが、チーズを作った場合の歩留まりはホルスタインよりも良いです。足腰が強いので放牧に適しており、外でのびのびと放牧して育てることができます。

 自然の力を利用するため、牛舎は木造にし、牛舎の床下には炭を埋め、機械は極力使わず手作業で行うなど試行錯誤を繰り返しながら、共働学舎のオリジナルチーズを開発しました。

 

 2003年には、『さくら』というチーズが、フランスで開かれた国際的なチーズコンテスト『第2回山のチーズオリンピック』で銀賞を受賞しました。さらに翌年、スイスでの第3回大会では金賞を受賞しました。世界のチーズ通が認める品質のチーズを製造できたのです。『さくら』は今、JALの国際便のファーストクラスで提供されています。私の作ったチーズはファーストクラスに乗れますが、私自身はまだまだファーストクラスには乗れません。

 

 農薬や化学肥料を使わずに良い牧草を育てれば、それを食べた牛は健康になり、良い牛乳を出し、良い糞を出します。それは良い肥料となり、良い牧草を育てます。そういう有機物の循環を作り、微生物が働きやすい環境を整えて、自然の発酵力を最大限に生かしたチーズを作っていきたいと考えています」。

 

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