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Channel: 在校生の方へ –酪農学園大学 | 獣医学群・農食環境学群
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実践酪農学で宮嶋望さんが特別講師

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NEWS NO.43(2013年度)
 実践酪農学で宮嶋望さんが特別講師 


本学農食環境学群 循環農学類は、4月からの毎週金曜日9時00分~10時30分、本学C5号館202教室にて、「実践酪農学(前期講義)」を行っています。
この講義では、様々なスタイルで酪農を営む酪農家を特別講師にお招きしています。


6月21日(金)は、農事組合法人共働学舎新得農場の宮嶋望代表が、「共働学舎 新得農場の歩み、チーズができるまで」と題し、アメリカで過ごした学生時代の体験話などをまじえ、学生たちに語りました。



■宮嶋さんの講義■
 1974年の春に、父が“さまざまな理由で学校に行けない人たちや、教育を受けなくてはいけないのに受けられない子どもたちと、どうやって生きていくかを考える場所をつくりたい”という思いで、長野県に信州共働学舎を開設しました。
わたしは長男なので、いつか父と一緒に仕事をすることになるだろうと思っていました。その当時わたしは東京にいましたが、アメリカへ興味を持っていた時期でもあり、働いてからではアメリカへ行く時間を作ることができない。と考え、これは今しかないと決断。ウィスコンシン州の大学へ留学し畜産酪農を学びました。

 留学中は、学校の実習と生活の為の仕事を一生懸命していました。アメリカに行き、広大すぎる規模、量産のための最先端技術、政治背景など、日本にいるだけではわからないことがたくさんあり、“政治の道具になるような酪農はしたくない、アメリカに負けない!日本に戻ってアメリカの真似をするだけではいけない”という考えを持てたことが最大の学びだったと思います。

 4年間の大学生活を終え、1978年に、十勝・新得町より30haの土地を借り受け、新得農場を開設しました。当時の十勝はアメリカにくらべ10年以上前の技術しかなく、借りた土地は傾斜があり牧草ロールが転がってしまうなど、大変なことがたくさんありました。しかし、そういった逆境の中でもアメリカで思ったことを実現すること、土地と味をつなぐ放牧主体の酪農を目指して本当によくがんばりました。

 開設当初から共働学舎に集まってくる人は、様々な困難を背負った方々です。
今ではたくさんのスタッフがいて、あらたに入所希望者が共働学舎に来ても部屋がない状態ですが、本当に行き場のない人たちですので、連絡がきたら必ず“おいで”と言います。はじめは、何をしたらよいのかわからなかったり、仕事をしたくないと言う人がいることもあります。わたしはそういう時に“わかったよ。仕事はしなくていいよ”と言うのです。すると、自ら何かを探しだし徐々に仕事をするようになり、だんだんと自立してゆくのです。

 そして、みなさん結婚し、子どもができ、家族が増えていくので、共働学舎では子ども手当ての仕組みはずいぶん前から取り入れていました。ここで生まれ育った子どもたちは、障害を持った方たちともずっと一緒に育っているので、大人になったらどんな世の中を作ってくれるのだろうと心から楽しみで仕方ありません。

 共働学舎を頼ってきてくれた方々は、社会が解決できない何かを伝えに来てくれたメッセンジャーなのだと思い、人のかくれた可能性を引き出す環境を整えることを大事にしています。

 可能性を引き出す環境要素は、人にも動物にも微生物にも“生きている場“として同じことだと思います。牛をリラックスさせて良いチーズをつくっていくことは、質の良いチーズが育つことでもあり、子どもや人間が育つ環境にもよいことだと思っています。

 新得農場のチーズが世界でも認められるほど成長できたのは1989年に出会った、ジャン・ユベール氏の存在があります。産業の機械化によって壊されてしまった味ではなく昔ながらの無殺菌乳でつくる伝統の製法をルール化にしたフランスAOCチーズ協会の会長です。その彼が「あなたは、この製法を傷ついたひとたちと真剣につくっているのなら、本物のチーズつくりを教えてあげる」と言ってくれ1990年に来日をしました。

 わたしは、無殺菌で本物のチーズをつくるためにたくさんのことを学び、彼の”乳をはこぶときにポンプをつかうと乳のパワーがなくなる”との教えにはポンプのない牛舎の設計図をつくり、”牛舎やチーズ工場は、エネルギーが流れる場になるようにしなさい“との教えには、コンクリートや鉄筋などを使わず天然素材や炭を使い、牛乳をはこばなくてよく、無臭でハエのいない、牛にとってもストレスのない牛舎を実現しました。


 この小さな農場で、自然と一体となり、仲間と協力して質の良いものづくりを続けているとだんだんと “本当のもの”がわかってきたように思います。
そして、わたしたちの作ったチーズが世界に認められ、たくさんの賞をいただき、共働学舎の“お互いの違いを認めよう!”の精神が世界の価値観と一致したのではないかと思っています。
わたしは今まで“自分の人生こうやっていこう!”と、たくさんのことを決断し進んできました。
みなさんも、自分の人生を自分でマネジメントをし、視野を広げ、世界にはばたいてくださいと話ました。



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