NEWS NO.177(2015年度)
2015年度 JICA日系研修員の研修成果報告会を開催
1月22日(金)、本学学生サービスセンターにおいて、ブラジルから来日して本学で研修中のJICA日系研修員2名の研修成果と、石井智美教授によるブラジル視察訪問報告会が開催されました。
JICA(独立行政法人国際協力機構)は、中南米の日系社会への支援を目的として、日系研修員の受入事業を行っています。自治体やNGO、大学、公益法人や民間企業などの団体が、JICAより受託して研修員を受け入れ、研修を実施しています。本学では、2015年度はブラジルから2名の研修員を、2015年5月18日から2016年3月4日までの約10カ月間受け入れています。
はじめに、竹花一成学長が、「ブラジルは著しい経済成長を達成し、2014年にはサッカーワールドカップが開催され、今年はオリンピックが開催されます。今まさに活気にあふれるブラジルの大地から来た研修員の方々が、この北海道、酪農学園大学の地に新たな風を運んでくれることを大いに期待しています。これからもより一層の絆を深め、酪農学園の精神である『健土健民』『三愛精神』を、ブラジルで花咲かせていきましょう」とあいさつしました。
JICA北海道国際センター次長の友成晋也氏は、「戦後の厳しい時代に、大勢の日本人がブラジルに移住しました。日系人の方々は、ブラジル社会の中で大きな役割を果たしており、両国の友好関係にも貢献しています。私たちJICAは、日系の方々の研修を通じて、人づくりのお手伝いをしています。学生のみなさんは、この研修を通じて、ブラジルとの絆をさらに強めていただきたいと思います」とあいさつしました。
<JICA日系研修員の研修成果報告>
(環境共生学類・環境GIS研究室 金子正美教授)
「研修に来る前は、私はGISの基礎しか知りませんでした。酪農学園大学でGISの操作や北海道の自然環境について学び、GISを使って地図作りやデータの可視化ができるようになりました。昨年10月に開催されたGIS DAY in 北海道2015 では、GISを利用してブラジルの人口や環境を可視化して紹介するポスターを作成し、最優秀ポスター賞をいただきました。また、デントコーンの収量調査にドローンを活用するためのフィールド調査を行い、この研究結果を現在まとめています。日系研修はあと1か月で終わりますが、大学院入学試験に合格すれば、4月から酪農学園大学の修士課程に進学し、勉強を続ける予定です」。
(食と健康学類・臨床栄養管理学研究室 石井智美教授)
「私は大学卒業後に、調理師としてベジタリアン・レストランで働いていましたが、栄養バランスのとれた食事について勉強したいと思い、この研修に応募しました。公益社団法人北海道栄養士会の活動や調理実習を通じて、栄養バランスのとれた食事の作り方を学びました。また、病院に見学に行き、病院食の作り方や、高齢者向けのミキサー食などを学びました。こういった日本の特別食を、ぜひブラジルで紹介したいと思います。北海道民俗学会の研究会では、ブラジルの文化を発表する機会をいただきました。この研修を通じて、いろいろな方たちと出会い、さまざまなことを学ぶことができ、とても感謝しています」。
続いて、JICA国際協力機構北海道国際センター研修業務課主任調査役の堀本隆保氏が、総評を述べました。
「日本人のブラジル移住はおよそ100年の歴史があり、日系人の勤勉さ、努力と団結力で現地の経済社会に大きく貢献しており、現在、日系人はブラジル社会で高い信頼と地位を得ています。このJICAの栄養学管理研修を終えた日系人の方々は、ブラジルの病院や介護施設などで勤務し、衛生面や栄養面を含めて和食文化を正しく継承することで、現地社会に大いに役立ち、広がりつつあるという良い成果を上げています」。
研修成果の報告に続いて、石井智美教授がブラジル視察訪問の報告を行いました。
石井教授は、JICA北海道を通じて酪農学園大学が受け入れた日系研修員の、帰国後の成果を視察し、フォローアップすることを目的に、昨年11月11日から18日まで、JICA北海道の友成晋也氏と堀本隆保氏と共にブラジルを訪問しました。
「JICAの事業による本学での『食品科学と栄養学管理研修』は、2008年にスタートして、これまでにブラジルから7名、パラグアイから4名、アルゼンチンから1名の研修生を受け入れてきました。職暦や年齢層もさまざまで、それぞれの方たちが何を学びたいかという意向に沿って、オーダーメードの研修を実施しています。
今回はサンパウロのJICA出張所内で、本学で研修して帰国後に、病院や施設などで栄養士の仕事をしている方々との意見交換会を行いました。日本で見聞きし学んだことが、日々の仕事の励みになっており、これから後輩を育てていきたいという言葉を聞いて、とてもうれしく感じました。また、日程の許す限り、彼らが勤務している施設を訪問して、ブラジルの現状を知ることができました。日系人の方々は、食事においても日本人以上に日本の文化を大切にしています。
今回のフォローアップを、これから受け入れる研修プログラムに生かし、ブラジルに帰国して何年を経っても役立つような、より良い研修にしていきたいと思います。また、帰国した研修員と連携しての共同研究など、今後の可能性も見い出すことができました」。