NEWS NO.17(2016年度)
小糸准教授のオランダ留学報告会を開催
2015年10月25日から2016年4月2日まで、オランダに留学していた循環農学類の小糸健太郎准教授(国際経済学研究室)の報告会が4月15日に学内で開催され、およそ60名の教職員、学生等が参加しました。
小糸准教授は、オランダ中東部のヘルダーランド州ワーヘニンゲン市に位置する国立農業大学であるワーヘニンゲン大学の社会科学部において、「酪農の情報システムと経営改善」というテーマで研究を行いました。オランダにおける酪農情報システムの利用の現状と、酪農家はどのような戦略で草地型酪農の経営改善について意思決定しているのかを明らかにするため、主にオランダの酪農の経営データ(生産額、生産費、資本ストックなどの経営の基本データに加え、乳牛の生涯乳量、生産月齢、後継牛の育成頭数なども含まれた農家データ)を使って、確率的生産フロンティア分析(Stochastic Frontier Analysis=SFA)によりフロンティア曲線を導き出し、経営の効率性を評価しました。
※確率的生産フロンティア分析 与えられた投入量に対して技術的に可能な最大の生産量を示す事業の生産フロンティア関数を定式化し、生産可能なフロンティア曲線から乖離したものを非効率性ととらえる分析方法。 |
その結果、乳牛の生産月齢が長い農家ほど効率的である、後継牛が多いほど非効率的である、生涯乳量が多いほうが効率的であることなどを明らかにしました。
オランダでは、農地価格が高いという土地の制約や、硝酸塩やリン酸塩、ふん尿など環境面からの制約、さらにアニマルウェルフェアの考え方も、経営において生涯乳量を増加させ、後継牛の育成頭数を減らす要因となっていることを紹介しました。
小糸准教授は、研究室やアパートの様子、食事、オランダと日本の違い、キューケンホフ公園やシーボルト博物館での観光などについても写真を交えて紹介し、有意義で楽しかった留学生活を振り返りました
また、小糸准教授の留学中にオランダを訪れて農家調査を行った吉岡徹准教授(農業経営学研究室)からの報告もあり、オランダの酪農家は家族経営が多いこと、生産量の増大は優先事項ではなく、手間をかけないため搾乳ロボットなどを取り入れ、ゆとりを重視していること、バンカーサイロの重石にポテトの搾りかすや土など使えるものを使っていることなどを紹介しました。また、生活面についても触れ、スーパーには食用の虫が売られていたこと、鉄道を利用するときはオートチャージのICカードOV-Chipkaartが便利だったことなどを紹介しました。
報告後は、オランダ酪農の現状や確率的フロンティア分析、生乳クオーター制度の廃止の影響などについて活発な質疑が行われ、オランダについて理解を深めるよい機会となりました。
※生乳クオーター制度 1984年にEU域内で導入された生乳生産量の抑制を目的とした生産調整対策。財政難から2015年3月で廃止された。廃止による増産(過剰生産)と生乳価格の下落が懸念された。 |


